今年も降っている。
自分ではコントロールできない、目に見えないもののエネルギーを感じる。豪雨、渇水かと思わせて増水、ゲリラ雷雨、線状降水帯...
この夏も何度もこれらの言葉を耳にした。毎年のように雨は私たちを驚かせるようになった。ただ通り過ぎるのを待つしかない。生命を生み出し、悠久の昔から、ゆったりと静かに存在する雨の姿に胸を打ちぬかれることもある。
一方、言葉を失う厳しさを見せることもある。
振り返れば 2020 の個展では落ち葉の紙や木の肌の痕跡に 恵みの雨のエネルギーを込めた。2018 は人に牙をむいた異 常気象、説明さえも拒むエネルギーに着想を得、育む雨を 願って版を刷った。 私の心の中に、いつも二つの雨の象 ( かたち ) がある。 22 年前の 9 月 12 日東海豪雨の際に受けた、今も心に居座 り続ける不安感と、森の中を歩く足元の腐葉土に蓄えられ た恵みの雨がもたらす安心感。どちらも雨の姿。二つの雨 を表現すること、雨の象 ( かたち ) を落ち葉に映すこと、目 に見えない、説明できないもののエネルギーは心を激しく かき回すが、大切なものを蔑ろにしないようにしていきたい。 (2022.8 土屋)
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「森の記憶 kuzu 22-2」 50 x 42cm 木版(凹凸版)、落葉の紙に雁皮刷り、Ed.2
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中央左:「雨の記憶 22-2」 90 x 225cm 銅版・木版、落葉の紙に雁皮刷り、Ed.2
中央右:「雨の記憶 22-1」 90 x 225cm 銅版・木版、落葉の紙に雁皮刷り、Ed.2
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左:「森の記憶 kuzu 22-2」 50 x 42cm 木版(凹凸版)、落葉の紙に雁皮刷り、Ed.2
右:「森の記憶 kuzu 22-3」 50 x 42cm 木版(凹凸版)、落葉の紙に雁皮刷り、Ed.2
左から:「森の記憶 shii 22-12」 12 x 24cm 銅版、落葉の紙に雁皮刷り、Ed.20
「森の記憶 shii 22-7」 36.5 x 18.5cm 木版、落葉の紙に雁皮刷り、Ed.2
「森の記憶 kiri 22-6」 36.5 x 18.5cm 木版、落葉の紙に雁皮刷り、Ed.2
「森の記憶 karamatsu 22-11」 24 x 12cm 銅版、落葉の紙に雁皮刷り、Ed.20
「森の記憶 karamatsu 22-10」 20 x 16.5cm 銅版、落葉の紙に雁皮刷り、Ed.20
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「森の記憶 noibara 20-11」 15 x 32.5cm 銅版、落葉の紙に雁皮刷り、Ed.2
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